動画制作の契約書を正しく作成・締結することは、プロジェクトをスムーズに進め、予期せぬトラブルを防ぐための重要なステップです。しかし、「専門用語が多くて内容が理解できない」「内容が複雑で契約書の作成に自信がない」という悩みを抱えている方も少なくないのではないでしょうか。
そこで本記事では、500社・4,000件以上の制作実績を持つ株式会社CACTASが、契約書の記載内容と締結時の注意点をわかりやすく解説します。動画制作の契約でよくあるトラブルや、すぐに使えるテンプレートの紹介も行っているため、ぜひ参考にしてください。
動画制作の契約でよくあるトラブル
動画制作の契約を締結する際には、以下のようなトラブルがよく発生します。それぞれの問題について詳しく見ていきましょう。
著作物の権利に関する問題
著作物の権利に関する問題は、頻繁に生じるトラブルのひとつです。
具体的には、動画の著作権が制作会社とクライアント間で未定のままプロジェクトが進行するケースがあります。また、制作された動画をもとにした二次的著作物の制作権限や、動画内に出演する人物の肖像権使用についての認識の不一致などが問題になることもあります。
これらを防ぐためには、契約書に著作権の明確な帰属先を記載し、二次的著作物に関する条項を設けることが重要です。出演者の肖像権についても、使用許可の範囲と条件を契約書に定めることで、後々のトラブルを回避しやすくなります。万が一トラブルが発生した場合は、弁護士から法的な助言を得ながら迅速に対応することが求められます。
機密保持に関する問題
動画制作の過程でサブコントラクターやフリーランサーへの再委託が行われる際、業務に関連する機密情報が意図せず漏洩することがあります。企業の戦略や新製品に関するデータ、または著名人の未公開映像など、デリケートな内容が外部に流出するリスクを伴います。
対策として、契約書に機密保持条項を設け、すべての関与者がこれを遵守することを義務付けることが必要です。再委託が行われる場合には第三者も同様の機密保持契約を結ぶことを要求し、違反した場合の罰則も契約に含めることが効果的です。また、機密情報の取り扱いに関する定期的な監査や教育を実施し、安全管理の徹底を図ることも重要です。
修正や納品後の対応に関する問題
修正回数や納品後の対応に対する認識の不一致も、よくあるトラブルです。クライアントが無制限の修正を期待している一方で、制作会社が契約内で定められた修正回数を超える作業に追加料金を要求するケースがあります。また、納品後にさらなる修正や更新が必要となった場合の対応範囲と費用もトラブルになりやすいポイントです。
これらを防ぐためには、契約書に修正の回数・範囲・納品後の対応について明確に定めることが重要です。修正に関する具体的な条件をあらかじめ合意・文書化しておくことで、双方の誤解を避けやすくなります。
動画制作の契約書の記載内容と確認するべき点
動画制作の契約書には、納期・委託料・修正回数など、プロジェクトを正確に管理するための重要な条項が含まれています。ここでは主な記載内容と、それぞれの確認ポイントを解説します。
納期・納品形式
動画制作の契約書では、納期と納品形式は非常に重要な要素のひとつです。一般的には以下のように記載します。
乙は、別に書面(電子メールを含む)により合意する場合を除き、令和〇年〇月〇日までに、甲の提示する仕様書(電子メールを含む)に基づき、本件業務により完成させた動画の複製物(以下単に「成果物」という。)を甲の指定する場所へ納品する。
確認すべき点は、具体的な納期日・納品形式(デジタルファイル形式や物理メディアなど)・納品場所・仕様書に基づく納品内容の明確化です。また、納期の延期に関する規定や納品後の検収手続きの詳細も確認しておきましょう。
委託料
委託料の条項は、プロジェクトの財務的な側面を明確にするために重要です。一般的には以下のように記述されます。
本契約に基づく乙の委託料は、〇〇円(消費税込み)とする。乙は、前条の検収完了後、甲に請求書を発行する。甲は、請求書に記載のある支払期日又は請求書発行日の属する月の翌月末日のいずれか遅い日までに、乙の指定する銀行口座へ振り込みの方法にて支払う。
確認すべき点は、委託料の総額・支払い条件(支払期日や方法)・消費税の取り扱い・支払いのタイミングです。分割払いの条件が設定されている場合は、それぞれの支払いスケジュールも確認しましょう。支払い遅延に対するペナルティや追加作業に対する料金の扱いも、契約書に定められていることを確認することが重要です。
修正回数
修正回数の取り決めは、プロジェクトのスムーズな進行と予算管理に不可欠です。一般的な記載例は以下のとおりです。
甲の修正依頼は仮納品後、甲乙協議の上定めた期間内とする。乙は、甲の指示する仕様書(電子メールを含む。)に定める制作の範囲内において修正を行う。原則、修正は1回までとする。但し、1回目の修正において本仕様からの逸脱が是正されない場合はその限りではない。検収、修正を経て、納品した後の修正に関しては別途料金が発生するものとし、乙は別途見積りを行う。
確認すべき点は以下のとおりです。
- 修正が許可される具体的な回数とその条件
- 修正の範囲や内容についての明確な定義
- 修正にかかる追加料金や条件の詳細
- 修正回数を超えた場合の追加費用の明示
知的財産権
知的財産権の取り扱いは、契約書において非常に重要な部分を占めます。以下は典型的な記載例です。
乙が従前より保有する知的財産権を成果物に適用した場合には、当該知的財産権について、乙は甲に対し、成果物の使用に必要な範囲で、無償で使用する権利及び再使用許諾する権利を付与するものとする。本件業務に伴い新たに発生した著作物の著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)及びその他の知的財産権は、乙から甲への成果物の納品をもって乙から甲に移転する。
確認すべき点は、すべての知的財産権がどのように扱われるか・特定の権利がどの当事者に帰属するか・第三者の権利侵害が発生した場合の責任の所在と処理方法です。
二次的著作物の制作
二次的著作物の制作に関する条項では、元の成果物を新たな形に変更する際の権利と義務を定めます。
甲が成果物の短縮版、改訂版ないし翻訳版等を希望する場合は、乙にその制作を委託する。乙は、甲が乙に対して第4条の委託料を支払い済みであることを加味した適正な制作費でこれを受託する。ただし、乙が短縮版、改訂版あるいは翻訳版等の制作を受諾できない旨通知した場合は、甲はこれを第三者に委託できる。
確認すべき点は、二次的著作物の制作の承諾・条件・委託の範囲・追加料金が発生する場合の費用計算方法です。
原版の保管
原版の保管に関する条項では、未編集の映像素材などの管理・処分に関する取り決めを明確にします。
乙は、成果物の原版(未編集の映像素材を含む。以下同じ。)を、検収完了後3年間保管する。乙は、保管期間経過後に原版を破棄する場合は、甲と協議する。
確認すべき点は、原版の保管条件・保管期間終了後の破棄手続き・デジタルデータのセキュリティ対策です。
再委託の可否
この条項は、乙が甲の知らないところで業務を第三者に委ねることを制限し、品質が不確定な成果物が提供されるリスクを防ぎます。
乙は、甲による事前の承諾を得た場合を除き、本件業務を第三者に再委託することができない。
確認すべき点は、甲の事前承諾の必要性・承諾の形式(書面・電子メールなど)・第三者に業務が委ねられた場合の責任の所在です。
秘密情報
秘密情報の取り扱いは、プロジェクトの機密性を保持するために極めて重要です。
甲及び乙は、本契約の履行に伴う情報の取扱いについては、甲乙間における秘密保持契約書に従うことを確認する。
確認すべき点は、どの情報が秘密情報に該当するか・秘密保持の期間・違反時の対応・情報のセキュリティ対策・契約違反の場合の罰則です。
損害賠償
損害賠償条項では、契約違反や義務不履行に起因する損害に対する責任を定めます。
甲および乙は、本契約に関して相手方の責めに帰すべき事由により損害を被った場合には、相手方に対しその賠償を請求することができる。
確認すべき点は、損害賠償請求の具体的な条件とプロセス・賠償責任の上限額です。これらの規定により、契約関連のリスクが明確になり、双方が安心してプロジェクトに取り組むことができます。
動画制作契約書のテンプレート
最後に、動画制作契約書のテンプレートを2つ紹介します。
マネーフォワード クラウド契約「【弁護士監修】映像制作契約書テンプレート(ワード)」
弁護士が監修した法律文書テンプレートを無料でダウンロードできるサービスです。映像制作契約書のほか、さまざまなビジネスシーンで使える契約書テンプレートが豊富に揃っています。 (https://biz.moneyforward.com/contract/templates/agreement/)
KIYAC(キヤク)
いくつかの質問に回答するだけで、プライバシーポリシー・利用規約・秘密保持契約書などの法律文書を自動生成できる弁護士監修のWebサービスです。契約書を一から作成したことがない方でも手軽に活用できます。 (https://kiyac.app/)
これらのテンプレートを活用することで、専門的な法律知識がなくても時間とコストを削減しながら効率的に契約書を作成できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 動画制作の著作権は制作会社とクライアントどちらに帰属しますか?
A. 原則として制作会社に帰属します。クライアント側に移すには著作権譲渡契約の締結が必要で、追加費用が発生するケースが一般的です。契約前に帰属先を明確にしておくことが重要です。
Q2. 修正回数の上限を超えた場合、追加料金は発生しますか?
A. 一般的には発生します。契約書には修正回数・範囲・納品後の追加修正に対する料金が明記されていることが多いため、契約締結前に上限回数と追加費用の条件を必ず確認してください。
Q3. 動画制作を外注した場合、原版(未編集素材)はどうなりますか?
A. 契約書の原版保管条項に従います。一般的には制作会社が検収完了後3年間保管し、保管期間終了後の廃棄についてはクライアントと協議するケースが多いです。将来的に素材を再利用する可能性がある場合は、保管期間・廃棄条件を契約前に確認しましょう。
Q4. 動画を別の用途で再利用(二次利用)したい場合はどうすればよいですか?
A. 著作権の帰属先によって対応が異なります。制作会社に著作権が帰属している場合は改めて許諾が必要です。二次利用の可能性がある場合は、契約時に使用範囲・媒体・期間を広めに設定しておくことで、後から許諾を得る手間とコストを省けます。
Q5. 制作会社が業務を第三者に再委託することはありますか?
A. あり得ます。再委託を無制限に認めると品質管理が難しくなるため、「甲の事前承諾がある場合のみ再委託可能」という条項を契約書に盛り込むことを推奨します。再委託が行われた場合の法的責任の所在も明確にしておきましょう。
まとめ
動画制作の契約書を作成する際は、トラブルを未然に防ぐために以下の点を明確に定めることが重要です。
- 著作権の帰属先と二次利用の範囲を契約前に取り決める
- 修正回数・範囲・追加料金の条件を明文化する
- 再委託の可否と責任の所在を明記する
- 原版の保管期間と廃棄手続きを確認する
- 機密保持・損害賠償の条件を双方で合意する
契約書作成の手間を省きたい場合は、記事で紹介したテンプレートの活用がおすすめです。
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※本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。最新情報は各社の公式サイトをご確認ください。